講演する貞広斎子副会長=鹿児島市のカクイックス交流センター
次の学習指導要領は2027年度改訂、30年導入に向け議論が進む。中央教育審議会の貞広斎子副会長(千葉大副学長)が、鹿児島市であった鹿児島県教育委員会主催のシンポジウムで講演した。要旨を紹介する。
◇
日本の公教育は、履修時間や出席日数で質を測る傾向がある。だが、やみくもに量をこなすより、理解の深さが、確かな学びにつながる。子どもたちの学力はコロナ禍を経て下がっており、危機的な状況だ。しかし、データに右往左往せず、子どもが何につまずいているのか分析することが求められている。
教員の働き方改革も必要だ。業務削減なしに、ただ勤務時間を短くしろというのは時短ハラスメント。「働きやすさ」とともに「働きがい」が得られる組織づくりが欠かせない。それを支えるのが同僚性だ。同僚との信頼関係が弱い現場は、教員の抑うつ傾向が高くなる。見せかけだけのワークライフバランスでは、同僚に相談できず取り残される教員が出てしまう。
教育施策の議論では、行政と学校現場が対立しがちだが、地域や学校の最適解は現場で完成させるもの。行政と現場が協働し、教育界みんなでリソース(人的・物的資源)を確保してほしい。
次期指導要領では、柔軟でオーダーメード可能な教育課程の構築も論点となっている。授業時数減で生じた時間を教材研究などに振り向ける「裁量的な時間(仮称)」や、不登校の児童生徒らを別の枠組みで評価する「二階建ての教育課程」が検討されている。
「主体的・対話的で深い学び」「個別最適な学び」を追求する現行指導要領の方向性は基本的に間違っていない。こうした学びにしっかり取り組めた子は正答率が高く、自己有用感も高い。次期指導要領はパブリックコメントも募集する。教員も、主体的に立案プロセスに参画してもらいたい。