「最低賃金で後手に回れば、人材流出が加速する」――隣県の動向横目にギリギリ交渉は異例の6回目にもつれた〈鹿児島1026円の舞台裏〉

2025/08/30 14:30
最低賃金73円引き上げについて採決する鹿児島地方最低賃金審議会。賛成多数で決定した=29日、鹿児島市の鹿児島合同庁舎
最低賃金73円引き上げについて採決する鹿児島地方最低賃金審議会。賛成多数で決定した=29日、鹿児島市の鹿児島合同庁舎
 最低賃金改定額を議論する鹿児島地方最低賃金審議会の議論は29日、73円増の1026円で決着した。労働局に記録が残る2012年以降初めて専門部会は6回目までもつれた。経営側は「中小企業には厳しい結果」と漏らし、労働側は「ギリギリ許容範囲内」と評価。委員らは「難しい議論だった」と振り返った。

 専門部会は当初から波乱含みだった。中央最低賃金審議会の目安額64円が示されたのは8月4日と遅れ、議論が本格化するはずだった2回目の5日は早々に散会した。労使の主張額が出そろった19日の4回目では、労働側88円、経営側64円と24円の開きがあった。

 労働側は物価高による生計費への影響や地域間格差是正を訴え、経営側は企業の支払い能力を重視し議論は滞った。今年は人材流出への懸念から、例年以上に隣県の動向が気になり、「各地の答申も意識せざるをえなかった」と委員らは口をそろえた。

 部会では、経営側が64円を固持する中、労働側が5回目の21日に83円、6回目の29日に77円まで譲歩し、13円差まで縮まったが折り合わず、公益委員が73円を提示。全15人の委員が出席した本審の採決で、会長を除く公益、労働者委員の全9人が賛成し決定した。

 労働側委員の海蔵伸一連合鹿児島事務局長(58)は「希望額とは乖離(かいり)しており不満は残る」、経営側委員で県経営者協会の浜上剛一郎専務理事(66)は「全国の流れを踏まえての結果だろう」とこぼした。

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