鹿児島水産高校の実習船で操舵を体験する中学生たち=8月20日、鹿児島市沖
少子化が進む中、鹿児島県内の公立高校は生徒募集に知恵を絞っている。各校は夏休み期間を中心に、体験入学や学校説明会を実施。学校独自のカリキュラムを売りにした企画などで、魅力発信に力を入れる。
鹿児島水産(枕崎市)は、実習船「薩摩青雲丸」(699トン)の体験航海が人気だ。8月20日、中学生と保護者61人が乗り込み鹿児島湾内を航海。かじを操作したり機関室を見学したりしながら、水産高ならではの学習環境に触れた。伊敷台中3年の飯澤蓮太朗さんは「船乗りの楽しさを実感できた」と満足げだった。
海洋科2年生が行う約60日間の航海実習も紹介。操船やマグロはえ縄漁など、実習内容の詳細を教員が説明した。福島聡校長は「中学生の興味を引くだけでなく、入学後の学校生活をイメージしてもらうことが大切」と意義を語る。
課題研究に力を入れるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の錦江湾(鹿児島市)は、学校を開放してイベントを開く。7月下旬にあった「夏休み自由研究お助け隊」は、集まった小学生と保護者約80人に、生徒と教員が実験と標本づくりのノウハウを指南。10月には、小中学生が自由研究の成果を発表するコンテストも予定するなど、SSHの強みを生かした企画を前面に打ち出す。
魅力の伝え方に工夫を凝らす学校もある。鹿児島女子(同市)は今年のオープンスクールから、PTAや在校生による相談会を始めた。通学手段や学費、放課後の過ごし方などを、親や子どもの目線から聞きたいという声に応えるためだ。青谷有美代校長は「学校のありのままを知ってもらうことが、信頼ある進学先として選ばれることにつながるはず」と強調する。
来春卒業を予定する中学3年生の進路希望調査で、公立への進学希望者が1万人を割るなど、状況は厳しい。県教育委員会によると、保護者が参加しやすい夜間の学校説明会や、インスタグラムなどの交流サイト(SNS)を使った魅力発信を進める学校もある。吉元彰一高校教育課長は「多角的な取り組みで魅力を知ってもらい、公立高が進路の選択肢の一つになれば」と期待を寄せた。