かごしま水族館のイルカ(同館提供)
イルカは周りにつられて行動を変える-。鹿児島市のかごしま水族館で行われた実験に基づく、そんな研究成果が国際学術誌に掲載された。学習したことと違っても“空気を読んで”つい周囲に合わせてしまう、人間社会と似たイルカの生態がうかがえる。
広島県の福山大学生命工学部海洋生物科学科の山本知里講師(40)と同館展示第1課の柏木伸幸主任(51)の共同研究。2021~23年の実験をまとめた論文が今年7月、英国の学術誌「Animal Behaviour」にオンライン掲載された。
実験は、6頭のハンドウイルカを2グループに分け、一つには尾びれで水面をたたきながら左回りに泳ぐ技、別のグループには腹を上にして右回りに泳ぐ技を教える。6頭から3頭を選び同時に合図すると、途中で教えられていない技に変えるイルカがいた。多数派に従うケースと、先に行動した個体に合わせるケースがあった。
群れの中でうまく暮らすために身に付けた能力とみられる。自分が学習したことと違っても周囲に合わせて行動を変えるケースはチンパンジーなどで報告されているが、イルカで確認されたのは初めてだという。
柏木さんによると、同館の「いるかの時間」でも、先に動きだしたイルカが間違うと、他のイルカが引きずられて行動することがある。柏木さんは「トレーナーとして日頃感じていたことだが、面白い結果が出た」。山本さんは「予想以上に周囲に影響されていた。年齢や性別、個体ごとの個性が行動にどう影響するなどさらに研究したい」と話している。