フェリー窮地。燃料高騰だけじゃない…往時は1日3000人を運んだ観光船だけど、近年は夏季2カ月で数千人――阿久根大島航路、25年度いっぱいの撤退検討

2025/09/09 11:45
阿久根と阿久根大島をつなぐ旅客船(九州旅客船協会連合会ホームページより)
阿久根と阿久根大島をつなぐ旅客船(九州旅客船協会連合会ホームページより)
 鹿児島県阿久根市を代表する観光地、阿久根大島への渡船を運航する共同フェリー(熊本県天草市)が2025年度いっぱいで同航路からの撤退を検討していることが8日、分かった。利用客の減少で赤字が続き、運航に必要な人員確保も難しいことなどが理由。酷暑による海水浴客の落ち込みも追い打ちをかけたとみられる。

 共同フェリーは、鹿児島や熊本の海運業者が集まって1992(平成4)年に設立し、前身の事業者からそれぞれ引き継いだ阿久根大島や天草地域の離島航路を担う。野付一郎社長(66)によると、6月の株主総会で、天草の住民生活に不可欠な複数の航路を維持するため、赤字の阿久根大島航路からの撤退を求められた。阿久根市には7月に現状を伝えた。

 同航路は19トン(定員99人)と12トン(同60人)の2隻を使い、7.8月のみ1日11往復の定期便、それ以外は予約制で運航する。運賃は大人1000円、子ども500円。昭和50年代ごろには1日3000人を運んだこともあったが、近年は低迷。7、8月の乗船者は2023年4500人、24年4800人、25年は3600人にとどまった。年間赤字額は700万~1000万円前後に上る。

 父親とともに同航路に長年携わってきた野付社長は「思い入れのある航路で継続したいが、将来を考えると厳しい状況」と語る。燃料高騰に加え、海上運送法改正で安全統括管理者の増員も必要になる。

 阿久根市は新型コロナウイルス禍後の利用者減少を受け、22年から7~8月以外の利用に対する運賃や燃料費の補助を実施してきた。市商工観光課は利用客の減少について、島の観光施設老朽化のほか、今年は悪天候による欠航も多かったためとみる。さらに近年は酷暑のため全国的に海水浴客は減少傾向にあるという。同課は「運航継続に向け、どんな方策が取れるか協議したい」としている。

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