暑さハンパないから…高校野球は7回短縮案、サッカーは夏大会NG――熱中症対策に決め手なし? 立ちはだかる高い壁に現場の試行錯誤は続く

2025/09/16 15:07
高校野球の試合中に首を冷やす選手=7月、鹿児島市の平和リース球場
高校野球の試合中に首を冷やす選手=7月、鹿児島市の平和リース球場
 厳しさを増す暑さが、小中高生のスポーツ大会に影響を及ぼしている。暑さを避けるため、鹿児島県内の競技団体も日程や競技時間の変更などの工夫を凝らしている。夏以外に日程をずらすには学校との調整が必要で、関係者からは苦悩の声も聞かれる。

 7月は鹿児島市の最高気温の平均が33度に達した。全国高校野球選手権鹿児島大会は、強い日差しの下で多くの試合があった。

 鴨池市民球場であった試合の終盤。遊撃手が無理な体勢から送球した後に動けなくなり、仲間に背負われてベンチに運ばれた。熱中症の症状で足がつったという。場内アナウンスが「選手治療中」を知らせる。ここ数年、よく見られるようになった光景だ。

 こうした事態を減らそうと、県高野連は今大会から暑い時間帯を避ける日程を組んだ。各球場での1日の最大試合数を3から2に変更。初日と決勝を除く開始時間を1時間早めて午前9時に統一した。順調に進めば第2試合も午後2時ごろに終わる。山内昭人理事長は「熱中症の症状を訴えた人数は、昨年に比べて半分ほどに減った印象」と効果を話す。

 8月の全国高校野球選手権は、昨年3日間実施した朝夕の2部制を6日間に延ばした。さらに、試合形式を9回から7回に短縮することを検討。10月の国民スポーツ大会で試行する。宮崎県の新人大会では既に実施されており、山内理事長は「同様の大会で試験的にできる」と関心を向ける。



 暑い時期そのものを避ける動きもある。鹿児島市で毎年8月下旬に開かれてきたサッカーの南日本U-12大会は11月になった。日本サッカー協会が示した「7~8月は原則大会を開催しない」方針に合わせた。

 チーム数を制限し、暑い時間を避ける日程にした例もある。県中学校体育連盟は、県中学校総合体育大会のサッカー、軟式野球で昨年度の32チームを半数に減らし、バドミントンも出場枠を減らした。その効果か、サッカーでは昨年2件の熱中症があったが、今年はゼロだったという。

 昨年大会で4件の熱中症が報告された弓道は、会場変更を検討している。今年は霧が出る扇風機を増やし2件に減ったが、県武道館弓道場は空調がない。来年は空調のある西原商会アリーナでの開催を調整中だ。



 日程変更などの対策によって新たに課題も生じている。県中学総体など参加枠を制限した競技では、出場機会が減ったことを残念がる声は多い。ほかにも、運営費やスタッフの確保に影響が出ている。

 県中体連の下村健悟理事長は「参加数を制限したことで、運営に充てる収入が減った」と明かす。参加費収入は100万円ほど減ったという。サッカーは1日の試合時間は減ったが大会日程が延びたため、費用は削減できなかった。

 競技時間を夕方以降にずらすことで、人繰りが厳しくなる可能性もある。陸上では、一般の大会で長距離種目を夕方以降に実施。補助員の生徒を午後6時までに帰宅させるため、競技役員の負担が大きくなった。



 暑い7、8月から開催時期をずらすには高い壁が立ちはだかる。

 日本陸上競技連盟は8月、全国高校総体の陸上を6月へ移行する案を示した。県高体連の新村大樹理事長は「もし実現すれば、予選の県総体は4月下旬になる」と話す。学校では入学式やオリエンテーションなど大きな行事があり、スケジュール調整が必要だ。

 鹿児島陸上競技協会の大村一光理事長は1年生が入学したばかりで新しい環境に慣れないこと、練習期間が短いことを挙げ「4月なら1年生は不利になる」と危機感を表す。運営面は、選手登録と大会準備に追われる。一方、県高校体育連盟の永迫昌毅会長も「後ろ倒しにしても受験シーズンとかぶる」と課題を指摘する。

 夏休みに偏りがちな大会スケジュールを変更するには学校との調整が不可欠になる。抜本的解決策は見いだせず、関係者の試行錯誤は続きそうだ。

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