福岡高裁に入廷する水俣病訴訟の原告ら=17日、福岡市
水俣病特別措置法に基づく救済の対象外となった鹿児島や熊本県在住者らが国と熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が17日、福岡高裁(久留島群一裁判長)であった。国や県側は控訴棄却を求め、一部原告を水俣病と認めた熊本地裁判決は是正されるべきと主張した。原告側は被害者の早期救済を訴えた。
昨年3月の熊本地裁判決は、鹿児島の9人を含む25人の罹患(りかん)を認定したが、損害賠償権が消滅する20年の除斥期間が過ぎたとして請求を棄却した。残る119人は、民間医師が作成した「共通診断書」で水俣病の主症状である感覚障害の有無は検討できないとして罹患を認めなかった。
判決の対象は1、2陣の144人。1人が控訴を断念し、4人が控訴後に取り下げた。控訴中の139人のうち鹿児島県在住者は45人。3陣以降の約1200人が熊本地裁で係争中。
17日の弁論では原告2人が意見陳述した。一審で水俣病と認められながら請求が棄却された、熊本県天草市の藤下節子さん(68)は、兄2人が特措法で認められたのに自分だけが非該当とされ、「どうか命があるうちに、水俣病と認めてください」と訴えた。
2023年の大阪地裁判決は、原告全員を水俣病と認めるなど各地で判断が分かれている。原告副団長の村山悦三さん(80)=鹿児島県出水市下水流=は「来年は公式確認70年の節目。解決に向かわないといけない。早く和解に応じてもらいたい」と話した。