映画監督の久保理茎さん
■かお・ロケ地と出演者がオール鹿児島の映画「エイタロウ」を監督した久保理茎(くぼ・りけい)さん
ロケ地と出演者がオール鹿児島の映画「エイタロウ」を監督した。地方の役者の現実を描くヒューマンコメディ。23日鹿児島ミッテ10で先行上映される。低予算の自主制作映画がシネコンにかけられるのは異例だ。
「自主映画は映画館で上映されない作品がほとんど。何とかして観客に届けたかった」。館側と粘り強く交渉し、ここまでたどり着いた。
鹿児島市出身。京都大学卒業後、NHKに入りディレクターとして番組制作に携わった。8年間勤め退職し、興味のあった映画の演出を学ぼうと米大学院に留学。帰国後は制作会社で映画「クライマーズ・ハイ」のプロデューサーや「血と骨」の助監督などを務めた。15年前に独立、今は鹿児島市を拠点に映像ディレクターとして活動する。
誰も注目しないところに光を当てる、そんな題材で映画をつくりたい-。出会ったのが鹿児島で働きながら演劇活動をしている本作の主役・徳田英太郎さんだった。挫折から立ち直った体験談を偶然聞き、「彼のような普遍性のある存在を伝えたい」と作品化を思い立った。
鹿児島にこだわったのは地方の映像文化を耕すためという。「話題性のある作品を誘致し、地域の知名度を上げるのも大事だがそれだけだと地方の人材は育たない」。地元で制作し、発信できる人材を育成しようと10年前から映画や動画づくりのワークショップを開く。私財を投じた作品の公開を控え、バイトと宣伝に集中する59歳。