糖尿病の薬でダイエット? SNSに躍る甘い言葉、飛びつく人が後絶たず――危険な副作用、薬剤師が警鐘「手軽に希望がかなう魔法の薬はない」

2025/09/27 11:24
ダイエット目的で使用される2型糖尿病の治療薬=鹿児島市
ダイエット目的で使用される2型糖尿病の治療薬=鹿児島市
 医薬品の適応外使用や国内では違法の成分・分量を含んだサプリメント購入が問題となっている。いずれも薬物乱用につながり、副作用で健康を害する危険がある。薬剤師ら専門家は「薬のリスクを軽視しないで」と呼びかける。

 「1カ月でマイナス7キロ」「リバウンドなし」。交流サイト(SNS)には、2型糖尿病や肥満症の薬にダイエットの効果があるとうたう動画や広告が次々に上がる。糖を尿と一緒に排出したり食欲を抑えたりする効能を強調したものだ。

 ところが、製薬会社の添付文書には、減量に関する効能・効果はない。糖尿病薬は食事療法や運動を続けても効果がない時、肥満症薬は肥満度が高く複数の生活習慣病がある場合など、厳しい条件を定める。

 文書には副作用として低血糖や嘔吐(おうと)のほか、急性膵(すい)炎、乳糖アシドーシスなど致死率の高いものもまれに起こると明記される。鹿児島県消費生活センターによると、ダイエットで利用した人からの相談は過去5年で3件と少ないが、うち2件が副作用に関するものだった。

 県薬剤師会の井上彰夫・薬事情報センター所長は、薬には副作用が付きものと指摘。「医師は通常、副作用以上の効果があると判断して薬を出す。副作用は服用メリットのない人にも同じように現れることが重視されていない」と注意を促す。

 国は糖尿病や肥満症の薬に痩身(そうしん)効果を認めておらず、医療保険は適用されない。しかし、自由診療として医師の診察を受け、薬代も全額負担すれば適応外使用も可能となる。大都市ではオンライン診療で簡単な問診を受けて購入するケースもあるという。

 こうした購入者が後を絶たない理由を鹿児島市内の薬剤師男性は「やせたい、きれいになりたいという欲求をSNSでかき立てられてしまうからでは」と推測。「手軽に希望がかなう魔法の薬はない。害があっても使い続けるのは、生きづらさから逃れるためのようにも思える」と話す。

 ダイエットや疲労回復などの目的で購入した海外の健康食品が、国内では違法で摘発されるケースもある。9月始めには、購入したサプリメントに大麻草由来成分が違法に含まれていたと逮捕された男性の事案に絡み、サントリー会長が福岡県警の捜査を受けたとして辞任した。

 鹿児島県警組織犯罪対策課の冨ケ原閣一理事官は「県内では過去10年間、サプリに違法成分が入っていたとして摘発した例は把握していない」と説明。「ダイエット効果がある、他の薬物より安全などという誘いに、軽い気持ちで手を出さないで」と続ける。県薬務課の常山隆明課長も「自分の判断だけで使用しないことが大事。どんな成分が入っているかを調べることも必要」と呼びかけた。

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