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国内の金の店頭販売価格が初めて1グラム2万円を超えた29日、製造工程で金が欠かせない鹿児島県内のものづくり関係者は「どこまで高騰するのか」と先行きを危ぶんだ。金製品を売買する質店では、利用者の動向を注視する。
国の伝統的工芸品の川辺仏壇は、金箔(きんぱく)などを使った豪華な装飾が特徴の一つ。「金価格高騰は業界にとって大打撃。原料高を反映して仏壇の値段が上がれば、需要がますます細りかねない」。県川辺仏壇協同組合(南九州市)の滝山健一理事長(69)は不安を隠せない。2023年8月に1グラム1万円を突破してからわずか2年で倍という値上がりに翻弄(ほんろう)されている。「受け継いできた文化や技術を守るため、公的な支援を要望したい」
製造業の現場にも影響が出ている。金属精密切削加工のマイクロカット(霧島市)は、光通信、航空・宇宙、自動車などの関連部品で金メッキ工程を持つ。金高騰が続き、今年、より薄い膜厚で対応できるよう方法を見直した。金を含む使用後のメッキ液を回収する仕組みの改善も検討中だ。「無駄をなくす工夫に一層努めたい」と担当者。
県内に質屋5店舗を構えるアシスト(鹿児島市)は9月、金に関する問い合わせや取引が前年同月より1割増えた。湯田浩二専務(48)は「2万円のようにキリのいい数字を超えると、家に眠っていたアクセサリーや仏具を売りに来るきっかけになる」と話す。
ただ、金価格の背景には国際情勢の変化がある。「急上昇している分、急な下落の可能性もある」と指摘。変動が大きくなると来店客も増えるとみる。
同市の天文館質舗では、金の持ち込みや買い取り価格の照会はあるが、1グラム1万円を超えた2年前ほどの勢いはないという。経営者は「価格上昇の様子を見て、まだ持っていた方がいいと判断する人が多いのかも」と推測した。