決め手は「豊かな電力と土地、水」――薩摩川内に国内最大級データセンター、敷地は九電火力発電所跡 1年以内にも着工意向、産業集積に意欲

2025/10/01 06:19
データセンター計画について説明するCDIBキャピタルグループのダニエル・ツォ副社長(左から2人目)ら=30日、薩摩川内市役所
データセンター計画について説明するCDIBキャピタルグループのダニエル・ツォ副社長(左から2人目)ら=30日、薩摩川内市役所
 鹿児島県薩摩川内市に国内最大級の人工知能(AI)のデータセンター新設を計画する日本と台湾の合弁会社の関係者が30日、市役所を訪れ、規模を示す総受電容量を当初は国内最大級の350メガワットとし、さらに拡張を目指す方針を説明した。開設場所は九州電力火力発電所跡地で、同グループの資源循環拠点「サーキュラーパーク九州」の敷地内とし、電力網の接続ができれば、1年以内にも着工したい意向。同市を関連産業の集積地とすることにも意欲を示した。

 合弁会社は台湾のCDIBキャピタルグループと、同種事業に知見のある信越科学産業(長野市)が設立するカイシンデジタルインフラストラクチャー。同日は日本側の代表を務める同社取締役で信越社の小坂幸太郎会長や、同グループのダニエル・ツォ副社長ら3人が田中良二市長らと面談した。

 AIの急速な普及に伴い、膨大なデータを高速処理するデータセンターの需要は拡大している。サーキュラーパーク九州は、川内原発に近く川内港に隣接する。今後は電力網の接続時期などが課題とし、施設の規模や稼働時期は未定。

 AIデータセンターは消費する電力量が大きいのが特徴。薩摩川内市を選定した理由として、電力や土地、水が豊富で拡張の余地があることや、地元の熱意を挙げた。資源循環などでサーキュラーパークとの連携も検討する。更新が必要なものを現地で製造することを含め、産業集積を進めることを視野に入れる。

 田中市長は説明を受け、川内港の活用や休止中の台湾とのコンテナ航路再開、新産業の人材育成などを目指すと表明。「市役所の総力を挙げて取り組みたい」と支援する姿勢を示した。

 小坂会長ら3人は県庁では塩田康一知事と面会。塩田氏は「着実に前進していることを大変うれしく思う。台湾と鹿児島は歴史的にもつながりが深く、相互経済交流の発展を期待している」と歓迎。その上で「センター整備には課題もあると聞いている。県としても国や地元と連携しながらプロジェクトが成功するよう支援したい」と述べた。



 薩摩川内市に人工知能(AI)向けデータセンターの開設を計画するカイシンデジタルインフラストラクチャーの小坂幸太郎取締役らは30日、市役所で田中良二市長を表敬訪問後に報道陣の取材に応じ、国が進める地方分散のモデルとなることに意欲を見せた。主なやりとりは次の通り。

 -同市を選んだ理由は。

 「AIデータセンターは従来に比べ、電力消費量がかなり大きくなる。市内には(九州電力)川内原発もあり、十分な電力供給が長期的に見込めると考えた。地元の支援が得られることと合わせて判断した」

 -川内原発の存在が大きかったのか。

 「どの電源由来(の電力)をいただけるかは、基本的には九州電力が決めること。われわれは使う側なので、それを使ってできることにチャレンジする」

 -どのようなビジネスを描いているか。

 「企業などの顧客が希望するサーバーを入れられる電源供給設備と通信設備、建物を造ることに特化する。顧客がサイバースペースを他社に提供、あるいは自社で使用という形を想定している。サーバーはAI向けになると(使う電力が多くなるため)消耗しやすく、3年に一度程度は更新が必要。その際に台湾から輸出するのではなく、市内で造る方が効率的だ」

 -展望は。

 「データセンターの約9割は関東と関西に集中しているが、国は地方分散を進めている。地元企業も関わって造り上げることで地域経済が活性化するほか、国全体としても偏っている電力網のバランス是正や産業創成にもつながる。地方でもできると、薩摩川内市をモデルの一つにしたい」

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