名物のかき揚げを丼に盛る上原由美さん(右)と母の松崎初美さん=9月25日、鹿児島市下荒田1丁目
鹿児島市の武之橋からすぐの「天ぷら新橋」(下荒田1丁目)が9月27日、51年の歴史に幕を下ろした。特大のかき揚げを盛った「別製かき揚げ丼」が名物で、常連客を中心に県外客からも親しまれた。21年前に亡くなった先代を継ぎ、切り盛りしてきた次女の上原由美さん(54)は「お客さまの支えでここまでやってこられた」と感謝する。
先代の松崎隆さんは、かつて東京の名店として知られた「橋善」で修業を積み、その味を引き継いだ。タカエビや貝柱、三つ葉入りのかき揚げは直径約15センチ、厚さ約5センチ。関東仕込みの濃く、甘くないタレが染み人気を博した。
9月にSNSで閉店を告知すると、なじみの客らが連日長い列をつくった。最終日は閉店時間を延長し、夜10時半に最後の客を見送った。かき揚げ丼を2杯たいらげた客や、東京から訪れた客もいたという。
由美さんは隆さんの下で7年修業。2004年の代替わり直後は客足が鈍ったり、「(天ぷらを)出すのが遅い」と叱られたりしたことも。それでも努力を重ね「お父さんの味になった」と言われるまでになり、繁盛店を守り続けた。
店を手伝う母の初美さん(82)の高齢も閉店の理由の一つ。由美さんは「昨年50年の区切りを迎えられ、やり切った気持ち。次の目標に向かって進みたい」と話した。