稲刈りをするコメ農家=7日、伊佐市大口里
2025年産の普通期米を巡り、JAが集荷時に生産者へ代金を仮払いする概算金が10日、鹿児島県内でも高騰する見通しとなった。県内の生産者からは「安心して再生産できる」と歓迎の声が上がる一方、上昇率が店頭価格に反映されることから、「コメ離れにつながらないか」と不安も聞かれた。
概算金をホームページで公開したJA南さつま(南九州市)。21~23年産までは1等米60キロ当たり1万2000円前後で推移していた概算金は、24年産で2万5800円、25年産は3万3600円と3倍近くに急騰した。今後、概算金を提示するJAにとって一定の目安となる。
伊佐市の40ヘクタールでコメを生産する猩々(しょうじょう)義秋さん(76)は「概算金が(30キロ当たり)1万7000円ほどなら安心」と喜ぶ。肥料代や農薬代、機械のメンテナンス費用などは高止まりしているといい、「今までは経営が苦しく、若い人の新規参入も少なかった。再生産にも力が湧く」。
同市で計46アールを手がける山内博仁さん(65)は「今までで一番高い」と戸惑う。概算金の上昇は小売店などの店頭価格とも連動し、農家の間では5キロ当たり4500円前後、銘柄米なら5000円を超えるだろうとうわさされる。「消費者の負担が増すのでは」とコメ離れを心配した。
「令和の米騒動」の影響で、25年産は全国的に主食用米の作付面積が増加している。農林水産省によると、鹿児島県の作付面積(9月15日現在)は前年同期比13%増の1万7600ヘクタール。収穫量は9月25日時点で同1万2100トン増の8万2900トンを見込む。
志布志市で約8ヘクタールの稲作をする渡邊春一さん(74)は「増産すると価格が下がる不安もある。農家が安心して生産できる額で安定してほしい」と願った。