タイガース初代オーナーは薩摩人-。25日に始まるプロ野球日本シリーズで2年ぶりの日本一を目指す阪神タイガースの初代会長・松方正雄(1868〜1942年)は、鹿児島市出身で首相を2度務めた明治の元勲、松方正義の四男だ。正雄自身も同市生まれ。米国留学中は大学野球で活躍、帰国後は日本職業野球連盟(現・日本野球機構)の副総裁として草創期のプロ野球発展に尽くした。野球殿堂入りも果たしている。
松方家の歴史に詳しい県歴史・美術センター黎明館学芸調査係長の崎山健文さん(56)によると、正雄は同市下荒田で生まれ、後に本家の養子となった。モネの「睡蓮」など美術の「松方コレクション」で知られる松方幸次郎は兄に当たる。野球殿堂博物館(東京)の資料では、米ペンシルベニア大で俊足二塁手として鳴らし、帰国後は阪神電鉄社長など関西財界の要職を歴任した。
阪神タイガースの球団HPなどによると、正雄は1935(昭和10)年に大阪野球倶楽部(くらぶ)=当時=の初代取締役会長に就任すると、プロチームの基礎づくりに情熱を燃やした。球団名が「タイガース」に決まった36年、日本職業野球連盟の創立時に副総裁に就いた。東京のチームへの対抗心を抱いていた逸話も伝わる。
タイガースが球団初の日本一に輝いた翌年の86年1月、正雄はプロ野球の発展に尽くした功績が認められ野球殿堂入りした。県出身者の殿堂入りは正雄のほか、ベースボールを「野球」と訳した中馬庚、広島の元投手・北別府学さんと外木場義郎さん、第4代日本高野連会長の牧野直隆さんしかいない。
長年のスワローズファンという、黎明館の崎山係長は「正雄はプロ野球の礎を築いた一人。西洋美術や野球の黎明期など、さまざまな分野で活躍した鹿児島出身者がいた歴史が感じられる日本シリーズ」と話し、盛り上がりを期待する。
日本シリーズは25日、みずほペイペイドーム(福岡市)で開幕。セ・パ両リーグのクライマックスシリーズを勝ち上がった、セ優勝の阪神と、パ優勝のソフトバンクが日本一を争う。