政治は弱い立場の人のためにある――ドミニカ移民、障害者支援、犬猫殺処分ゼロ…「虫の目」に徹し国会議員36年、尾辻秀久さんに桐花大綬章

2025/11/03 11:22
尾辻秀久氏
尾辻秀久氏
 政府は2025年秋の叙勲受章者を3日付で発表した。今回最高位の桐花大綬章は前参院議長の尾辻秀久さん(85)=鹿児島県南さつま市出身=と前最高裁長官の戸倉三郎さん(71)に授与した。

◇桐花大綬章~前参院議長・尾辻秀久さん

 今年7月の任期満了をもって36年間の国会議員生活に終止符を打った。桐花大綬章の受章を受け、「ありがたいという気持ちと、畏れ多いという気持ちです」とのコメントを寄せた。

 鹿児島県議を2期経験して国政に進出。参院議員を6期務め、参院議長や厚労相、財務副大臣の要職を歴任した。「私は不器用だから、(光の当たらない谷間を探す)『虫の目』に徹すると言い続けてきた。信念をブレずに守り続けられたことは良かった」と振り返る。

 印象深い仕事にドミニカ移民問題を挙げる。敗戦後の急激な人口増加を懸念した日本政府が中米ドミニカ共和国への移住を推進したが、鹿児島を含む1000人余りの移住者に募集時の約束だった優良な農地は与えられず、生活は過酷を極めた。超党派の議員懇談会会長として何度も現地を訪問するなど支援に奔走した。

 障害者自立支援法や自殺対策基本法をはじめとする立法活動のほか、がん患者支援や犬猫殺処分ゼロといった議連活動にも汗をかいた。「振り返ればたくさんの思いがあふれる仕事ばかり。徹底して『弱い立場の人の側』に立ってきた」

 3歳の時に戦争で父を亡くした。日本遺族会の会長を3年近く務め、戦争だけはダメだと言い続けてきた。国会が戦争を知らない世代ばかりになり、「今がこの国の平和を守るための正念場。残された命を懸けて平和の大切さを訴え続けたい」と力を込める。

 現在は都内で生活し、2年前に圧迫骨折した腰部のリハビリに取り組む。「ふるさとを思う心は年を重ねるごとに大きくなる。月に1度くらいしか鹿児島に帰れないが、心の中の風景はいつも桜島と共にある」

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