「洗濯機を回すような8の字を描く揺れ。電車は宙に浮いた」 能登半島地震から間もなく2年。当時の観光列車ガイドは語り部に。震災の教訓と復興への歩みを伝える

2025/11/07 12:19
能登半島地震の揺れや現在の暮らしについて表情豊かに伝えるのと鉄道の震災語り部
能登半島地震の揺れや現在の暮らしについて表情豊かに伝えるのと鉄道の震災語り部
 能登半島地震の被災地を、共同通信加盟社論説研究会の一員として9月末から10月にかけて訪れた。のと鉄道「震災語り部観光列車」に乗車し、生々しい震災の体験や教訓、沿線の今に触れた。

 車窓からは穏やかな七尾湾、押しつぶされたまま公費解体を待つ家々が目に入る。語り部の一人で、観光列車のガイドをしていた宮下左文さん(68)は身体を右へ左へと大きく動かしながら、昨年元日の発生時を再現して見せた。

 列車は能登中島駅(石川県七尾市)に停車中だった。ドスン、という音とともにゆっくり始まった揺れは、どんどんひどくなった。乗客に不安を抱かせぬよう何とか手すりにつかまり「必ず安全な場所に誘導します」と叫んだ。

 2度目の警報音の後はもう立っていられなかった。「洗濯機を回すような、8の字を描くような揺れで電車が宙に浮きました」。48人の乗客乗員は高台の廃校に避難。迫る津波を坂道の途中で目の当たりにした。地元の住民と身を寄せ合い夜を明かしたと、振り返る。

 能登半島東岸を運行するのと鉄道は、七尾-穴水間の8駅、33.1キロ。県や地元市町、金融機関による第三セクターだ。線路や駅も被害を受けたが、通学利用に間に合わせようと4月6日、3カ月余りで全線再開にこぎ着けた。

 自宅が全壊した宮下さんは仮設住宅で暮らす。子の帰省もままならないが、再建する気持ちにはまだなれないと明かした。「前に進む人、足踏みする人、離れた人もいる」と一様ではない住民の心情を切々と代弁する。そんな中でも「復興に役立つなら、語りたい」。

 この日も心のこもった方言で乗客を見送った。「ほんならね。また来てくだいね(くださいね)、まっとんね」

〈能登半島地震「被災地を歩いて~本紙記者ルポ」より〉

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >