あえてシンプルな衣装で登場したという尾上右近 (C)ORICON NewS inc.
歌舞伎俳優の尾上右近が30日、東京・歌舞伎座タワー5階の歌舞伎座ギャラリー・歌舞伎座ホールで、10月1日から開催される「特別展 This is KABUKI 体験!『義経千本桜』が誘う歌舞伎の世界」(~11月16日)の内覧会に登場。展示を紹介しつつ、同じく1日より歌舞伎座で幕を開ける松竹創業130周年「錦秋十月大歌舞伎」通し狂言『義経千本桜』(~21日)への意気込みを語った。
【写真】きらびやか…ブラックコーデで登場した尾上右近
今回の特別展は、歌舞伎三大名作のひとつ『義経千本桜』を題材に、大道具、衣装、小道具、そして俳優の魅力まで、多彩な歌舞伎の世界を紹介。ミニ「花道」を歩いたり、小道具「拍子木」を鳴らしたりと、見て、触れて、なりきって歌舞伎の体験ができるほか、400年以上の歴史をひも解く展示も用意されている。
右近は展示物のひとつ「狐忠信(源九郎狐)」の「たすき」を手に「すごく重いんですよ」と説明。衣装についても「『吉野山』の佐藤忠信ほど役者によって衣装が違う役どころはない。今回、僕はあえてシンプルにしています」と明かした。
さらに展示全体については「子どもの頃にこういう展示があったら楽しくてしょうがなかったと思う」と笑顔を見せ、「歌舞伎は力強さだけでなく、華やかさや柔らかさ、日本人ならではの情緒もある。多面性のある伝統芸能だと思う」と強調。「舞台を観てから展示を楽しんでもいいし、逆に展示から入って想像を膨らませてから舞台を観てもいい。どちらでも十分楽しめる。空間そのものをエンタメとして楽しんでもらえるのが歌舞伎の素晴らしさ」と呼びかけた。
『義経千本桜』は、源平合戦後の源義経を軸に、平知盛、いがみの権太、佐藤忠信(狐忠信)らの物語が並行して描かれる。史実と虚構を巧みに織り交ぜた壮大な物語は、初演から270年以上経った今も上演が重ねられている。
右近は「初めて観た舞台が『義経千本桜』の『吉野山』だった。憧れの作品に自分が出演し、今度は憧れてもらう立場になったと実感している。この循環こそが歌舞伎」と言葉に力を込めた。
いよいよ迎える初日に向けては「30代半ばとなり、もう若手ではないので、大人としての説得力を持って臨みたい」と決意を表明。
今年は、映画『国宝』のヒットをきっかけに歌舞伎に興味を持ち、歌舞伎座を訪れる人も増えていると言われるが、「歌舞伎俳優は重たい衣装を着て、ノーマイクで声を張り上げ、毎日自分に負担をかけるのが当たり前。歌舞伎は命懸けのエンタメ。ガチのバイブスを浴びに来てほしい」と笑顔でアピールしていた。